風力発電について
世界規模で脱炭素社会の実現やカーボンニュートラルなど地球環境への貢献が求められております。脱炭素社会の実現に向けては、特に自然エネルギーを活用した電力発電への期待が高く、注目が集まっております。そのひとつとして挙げられるのが、風力発電です。風力発電は、風の力を利用し、ブレードと呼ばれる羽を回転させ、その風力を発電機で電気に変えています。自然エネルギーだけを利用するため、クリーンな発電となるのです。日本国内では北海道や東北地方、そして九州地方などに多くの地域に設置されています。
風力発電機の設置場所としては、陸上と洋上があります。陸上風力発電機の場合は、年間風速6m以上などの一定以上の風速の風が安定して吹いている広い土地があれば設置可能です。小型の風力発電であれば、130㎡の面積があれば設置できる場合もありあますが、近隣住民や自然環境、風況などを考慮することが不可欠です。ヨーロッパでは、洋上風力発電機が多く採用されております。というのも、海上の広々としたエリアでは、風力を安定的に受けることができるため、効率的な発電が可能となっているからです。また、騒音問題や人的被害など様々リスクを回避することができるのもメリットとして挙げられております。
世界の再生可能エネルギーの中で風力発電は、最大規模の発電量を占めております。陸上、洋上発電機で問わず、一日を通じて発電可能なことから、今後も伸びていく可能性が高いとみられております。日本国内においては、欧米諸国と比較すると風力発電は浸透しておりませんでしたが、技術進展やFITと呼ばれる固定価格買取制度等の新たな制度により、導入が進んでおります。
✓ 欧州メーカーを中心とする海外メーカーが市場を占める。
✓ 海外メーカーは、歴史はあるものの、日本市場においては高コストである。
✓ 日本の風況に適合し、融通の利く、低コストな日本メーカーの導入が望ましい。
風力発電機メーカーについて
風力発電機のメーカーは、1990年以降、欧州の先進国内にて企業間でのM&Aが進み、各メーカーが淘汰されました。2000年代に入ると、大型機械メーカーが台頭する一方で、技術提供を受けた新興国側のメーカーが市場に参入するにようになりました。また、各企業は更なる競争力の強化に向けて、部品メーカーを統合するなど、部品の内製化などが進みました。近年では超大型風車や洋上風量発電機の開発が盛んとなっており、技術の獲得や確保を目的とした、新たな企業買収や統合、業務提携が盛んです。
世界の風力発電メーカーのシェアとしては、欧州メーカーが大部分を占めておりましたが、中国メーカーが海外メーカーからの技術提供を受けた結果、製造シェアを伸ばしている状況です。
日本国内の風力発電機においては、約7割が外国製メーカーとなっております。外国製メーカーの特徴としては、歴史は長く、ブランド力があるものの、発電機設備やメンテナンスコストが割高であり、オペレーションや復旧の体制構築に苦慮する場面が多いなどデメリットも存在します。加えて、国内に外国製品のメンテナンスに対応し得る技術者が少ないことや、故障復旧のために部品を海外から入手し、併せて施術者の来日も必要となる場合もあります。それゆえ、修理に数か月もの期間が必要となるケースもあるようです。
ヴェスタス Vestas Wind Systems(デンマーク)
世界最大規模の風力発電機メーカー。1945年に設立。1979年より風車を販売し、累積での導入量は世界第1位であり、世界80か国以上で導入されております。2003年にNEG Miconと合併し、現在の社名となりました。設置エリアとなるサイトの開発から、風力発電機の製造販売、そしてメンテナンスまで一連のサービスを提供しております。
世界規模で事業を展開し、幅広い製品のラインナップをそろえ、発電容量や対応風速、そして陸上用・洋上用など多様な規格の風力発電機を販売しております。洋上風力発電機の市場では、シーメンスと共に寡占の状況にあります。
シーメンスガメザ Siemens Gamesa Renewable Energy(スペイン)
1979年より風車を販売していたデンマークのボナスエナジーを2004年に買収したことから、風力発電市場に参入しております。2017年にはシーメンスの風車製造部門と合併したことで、現社名となりました。厳しい風況にも対応可能な高い耐久性が特徴です。特に洋上風力発電の先駆けであり、世界初の洋上風力発電プラントをデンマークに建設するなど、現在でも洋上風力では高いシェアを保っております。
ゴールドウィンド Goldwind 金風科技(中国)
1998年に設立された中国の風車メーカー。新疆ウイグル自治区に本拠地を置く。ドイツのRE Power社から技術提供を受けて、事業を展開した。2010年からは国外にも進出し、米国のほか、チリやエチオピアなど南米、アフリカにも進出しています。2019年には風力発電メーカーシェア3位となりました。特に中国メーカー各社は欧米から技術提供を受け、低コストの風力発電機を生産しております。中国国内でのマーケットの拡大により、生産量を増やしながら、技術力を蓄えてながら、企業間での合併統合を繰り返しながら、事業規模を拡大しています。
GEウインドエナジー GE Wind Energy(米国)
2002年にEnron Windの風力発電部門を買収し、風力発電市場に参入しました。その後は、GEグループの豊富な資金と販売網を生かしながら、サプライチェーンの買収による拡大統合を進め、事業拡大を進めております。2009年には洋上風力の技術を持つ、Scan Windを買収し、洋上風力市場への参入も始めており、中国やブラジルなど新興国の市場開拓も進めています。
エネルコン Enercon(ドイツ)
1984年から風力発電市場に参入し、高品質を軸として事業戦略を進めています。低風速でのカットインや落雷への高い耐久性が特徴であり、ドイツでのシェアが一位のメーカーです。1997年に日立と協業関係となり、日立が日本国内でのパートナーとして風力発電機を扱ってきましたが、その後日立が自社生産を止め、2019年から日立パワーソリューションズに発電機を提供し、販売しています。
前述したように、一般的に外国製メーカーの発電機での風力発電建設はコスト高になることが多く、また不具合が生じた際のメンテナンス体制にリスクが高いことを考慮に入れる必要があります。
JE Wind(日本)
2021年にてMW級風力発電機メーカーとしては唯一の日本企業。2005年にドイツにて風力発電の研究所を開設し、既存の風力発電機メーカーへライセンス付与を開始しました。ライセンス契約ベースにて、世界に8,000機の風力発電機が稼働しています。2019年より、自ブランドとして風力発電機を展開するために、日本市場に参入すべく、会社を設立しました。現在は主に2Mと5Mの風力発電機を製造販売しています。事故発生は一度もなく、あらゆる気象条件に対応した高耐久性の風力発電機が特徴です。1機から低コストで導入できるなど、小回りが利いた導入スキームを持つため、柔軟なサポート体制が構築されています。
三菱重工業(日本)
1980年に風車を製造開始したことから始まりました。2010年にイギリスのArtemis Intelligent Powerを買収し、洋上風力市場の参入おいて必要な技術を確保しました。しかし、2013年にヴェスタスとの合弁企業で洋上風力専業のMHIヴェスタスを通じた体制に移行したが、2020年に解消しております。
日立製作所(日本)
2012年に富士重工業の風力発電事業を買収し、風力発電事業へ参入。しかしながら、2019年には撤退しております。当時の日本市場ではマーケットの規模が小さく、コスト削減効果も表れなかったことも理由として考えられます。